古典和歌stream

岩の根にかたおもむきになみ浮きて
鮑を潜く海人の群君

歌の意味
岩の根もとに、一方に向いて並んで波に浮かびながら、鮑を求めて潜る海人の長であることよ。
鑑賞
雑歌 1377

詞書「沖なる岩につきて、海人どもの鮑採りける所にて」
 沖の岩のそばで、海人たちが鮑を採っている所で詠んだ一首である。岩の根もとに、皆が一方に向いて並んで波に浮かびながら、鮑を求めて潜る海人の長たちであることよ、と詠む。
 一斉に同じ方向を向いて並んで浮かび、潜っていく海人たちの姿を、具体的に描いている。「並み」に「波」を掛け、並んで浮かぶさまと波に浮かぶさまとを重ねている。前歌に続き、海人の漁を写実的に捉えている。

 初句「岩の根に」は、岩の根もとに、の意である。
 二句「かたおもむきに」は、一方に向いて、の意である。
 三句「なみ浮きて」の「なみ」は、「並み」と「波」を掛けた掛詞で、並んで波に浮かんで、の意を表す。
 四句「鮑を潜く」は、鮑を採るために潜る、の意である。
 結句「海人の群君」の「群君」は、海人たちの長、統率者の意である。

むらぎみ:漁師たちの長、統率者
かづく:水に潜る
なみ:「並み」と「波」を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
栄螺住む瀬戸の岩壺求め出でて 急ぎし海人のけしきなるかな
次の歌
小鯛引く網の浮縄縒り組めり うきしわざある塩崎の浦