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巣鷹渡る伊良湖が崎を疑ひて
なほ木に帰る山帰りかな

歌の意味
巣鷹が渡ってゆく伊良湖が崎を不安に思って、やはり木へと帰ってゆく山帰りの鷹であることよ。
鑑賞
雑歌 1389

詞書「二つありける鷹の、伊良湖渡りをすると申しけるが、一つの鷹は留まりて、木の末にかかりて侍ると申しけるを聞きて」
 二羽いた鷹が伊良湖の海を渡ってゆくと聞いたが、そのうち一羽の鷹は渡らずに留まって、木の梢にとまっていると聞いて詠んだ一首である。巣鷹が渡ってゆく伊良湖が崎の海を不安に思ってためらい、やはり木へと帰ってゆく山帰りの鷹であることよ、と詠む。
 伊良湖岬は、秋に鷹が群れをなして海を渡る名所である。海を渡る勇気が出ずに引き返した鷹を、人にたとえて描いている。「山帰り」は、山で一年を過ごして羽の生え変わった鷹のことで、その名に、山へ帰る意を重ねている。

 初句「巣鷹渡る」の「巣鷹」は、巣から捕らえて育てた鷹の意で、字余りとなっている。
 二句「伊良湖が崎を」は、三河国の伊良湖岬を、の意である。
 三句「疑ひて」は、不安に思ってためらって、の意である。
 四句「なほ木に帰る」は、やはり木へと帰る、の意である。
 結句「山帰りかな」の「山帰り」は、山で一年を過ごした鷹の名で、山へ帰る意を重ね、「かな」は詠嘆の終助詞である。

すだか:巣から捕らえて育てた鷹
やまがへり:山で一年を過ごし羽の生え変わった鷹
作者
西行
出典
山家集
前の歌
伊良湖崎に鰹釣り舟並び浮きて はがちの波に浮かびつつぞ寄る
次の歌
はし鷹のすずろかさでもふるさせて 据ゑたる人のありがたの世や