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黒髪は過ぐると見えし白波を
潜き果てたる身には知れ海人

歌の意味
黒髪はもう過ぎ去ってしまったと見える、その白波を、潜り尽くしてきた身として知るがよい、海人よ。
鑑賞
雑歌 1398

詞書は前の歌に続き「新宮より伊勢の方へまかりけるに、三木島に舟の沙汰しける浦人の、黒き髪は一筋もなかりけるを呼び寄せて」
 黒髪の時は過ぎ去ってしまったと見える、白波のような白髪を、波に潜り尽くしてきた身として、自ら知るがよい、海人よ、と詠む。
 「白波」に老人の白髪を重ね、生涯波に潜り続けた結果、波のように白い髪になったのだと、老漁師の長い年月を表している。前歌の問いかけに続き、老いを自覚せよと呼びかけている。

 初句「黒髪は」は、黒い髪は、の意である。
 二句「過ぐると見えし」は、過ぎ去ってしまったと見えた、の意である。
 三句「白波を」は、白い波を、の意で、老人の白髪を重ねている。
 四句「潜き果てたる」は、潜り尽くしてきた、の意である。
 結句「身には知れ海人」は、その身として知るがよい、海人よ、の意で、命令形で呼びかけている。字余りとなっている。

かづきはつ:潜り尽くす
作者
西行
出典
山家集
前の歌
年経たる浦の海人人言問はん 波を潜きて幾世過ぎにき
次の歌
声せずは色濃くなると思はまし 柳の芽食む鶸の群鳥