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心をば見る人ごとに苦しめて
何かは月の取り所なる

歌の意味
見る人ごとに心を苦しめておいて、いったい何が月の取り柄だというのだろう。
鑑賞
雑歌 1410

詞書なし
 月は、見る人それぞれの心を物思いで苦しめておいて、いったい何が取り柄だというのだろう、と詠む。
 月を見ると誰もが物思いに沈むことを、月への恨み言として表している。もちろん本心から月を否定しているのではなく、月を愛するがゆえの逆説的な嘆きであり、前の歌々の月への複雑な思いを受けている。

 初句「心をば」は、心を、の意で、「をば」は強調である。
 二句「見る人ごとに」は、月を見る人それぞれに、の意である。
 三句「苦しめて」は、苦しめておいて、の意である。
 四句「何かは月の」の「かは」は反語で、何が月の、の意を表す。
 結句「取り所なる」は「かは」と呼応して連体形で、取り柄であろうか、いやない、と結ぶ。

とりどころ:取り柄、長所
作者
西行
出典
山家集
前の歌
月に恥ぢてさし出でられぬ心かな 眺むが袖に影の宿れば
次の歌
露けさは憂き身の袖の癖なるを 月見る咎に負ほせつるかな