眺め来て月いかばかり偲ばれん
この世し雲の外になりなば
- 歌の意味
-
長年眺めてきた月が、どれほど懐かしく思われることだろう。この世が雲の彼方の遠いものとなってしまったならば。
- 鑑賞
-
雑歌 1412
詞書なし
長年親しく眺めてきたこの月は、どれほど懐かしく思われることだろう、もし死んでこの世が雲の彼方の遠いものとなってしまったならば、と詠む。
死後に、この世で見た月をどれほど恋しく思うだろうかと想像している。月への愛着が来世にまで及ぶことを詠み、前の巻の巻末の第千四十一首で、この世で眺めた月が来世の闇を照らすと詠んだのとも響き合っている。
初句「眺め来て」は、長年眺めてきて、の意である。
二句「月いかばかり」は、月はどれほど、の意である。
三句「偲ばれん」の「れ」は自発の助動詞、「ん」は推量で、懐かしく思われることだろう、の意を表し、三句切れとなる。
四句「この世し雲の」の「し」は強意の副助詞で、この世が雲の、の意である。
結句「外になりなば」の「なば」は完了の助動詞「ぬ」の未然形に「ば」が付いた仮定条件で、彼方になってしまったならば、の意である。
しのぶ:懐かしく思う、恋い慕う
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
露けさは憂き身の袖の癖なるを 月見る咎に負ほせつるかな
- 次の歌
-
いつか我この世の空を隔たらん あはれあはれと月を思ひて