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捨てたれど隠れて住まぬ人になれば
なほ世にあるに似たるなりけり

歌の意味
世を捨てたけれども、隠れ住まない人になってしまったので、やはり世にいるのと似たようなものであったよ。
鑑賞
雑歌 1416

詞書なし
 世を捨てて出家したけれども、山奥に隠れ住むことをしない人になってしまったので、結局はまだ俗世にいるのと似たようなものだ、と詠む。
 出家しながらも、各地を旅し、都の人々とも交わり続ける自らの在り方を、厳しく省みている。遁世の形をとりながら真の遁世に至っていないという、西行自身の自己批判が表れた一首である。

 初句「捨てたれど」は、世を捨てたけれども、の意である。
 二句「隠れて住まぬ」は、山奥に隠れ住まない、の意である。
 三句「人になれば」は、人になってしまったので、の意で、字余りとなっている。
 四句「なほ世にあるに」は、やはり俗世にいるのに、の意である。
 結句「似たるなりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、似ているのであったよ、と結ぶ。

すつ:世を捨てる、出家する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ひときれは都を捨てて出づれども 巡りてはなほ木曽の懸け橋
次の歌
世の中を捨てて捨て得ぬ心地して 都離れぬ我が身なりけり