深く入るは月ゆゑとしもなきものを
うき世しのばんみ吉野の山
- 歌の意味
-
深く山に入るのは、月のためというわけでもないのに。つらい世を忍んで住もう、み吉野の山に。
- 鑑賞
-
雑歌 1422
詞書なし
山深く分け入るのは、月を見るためというわけでもないのに、つらい世を逃れ忍んで住もう、み吉野の山に、と詠む。
深山に入る理由は月を愛でるためではなく、憂き世を逃れるためだと述べ、吉野の山を遁世の地として選ぶ決意を表している。「うき世しのばん」の中に「よしの」の音を隠し、結句の「み吉野」を導く技巧が凝らされている。
初句「深く入るは」は、山深く入るのは、の意で、字余りとなっている。
二句「月ゆゑとしも」は、月のためというわけでも、の意である。
三句「なきものを」の「ものを」は逆接で、ないのに、の意で、字余りとなっている。
四句「うき世しのばん」は、つらい世を忍んで住もう、の意で、「うきよしの」の中に「吉野」の音を隠している。
結句「み吉野の山」の「み」は美称の接頭語で、体言止めとなっている。
しのぶ:隠れ忍ぶ、耐え忍ぶ
みよしの:吉野の美称
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
悪し善しを思ひ分くこそ苦しけれ ただあらさればあられける身を
- 次の歌
-
この里や嵯峨の御狩の跡ならん 野山も果てはあせ変はりけり