庭の岩に目立つる人もなからまし
かどあるさまに立てし置かずは
- 歌の意味
-
庭の岩に目を留める人もいなかっただろう。もし趣のある姿に立てて置かなかったならば。
- 鑑賞
-
雑歌 1424
詞書「大覚寺の金岡が立てたる石を見て」
大覚寺に残る、巨勢金岡が立てたという石を見て詠んだ一首である。もし金岡が趣のある姿に立てて置かなかったならば、庭の岩に目を留める人もいなかっただろう、と詠む。
巨勢金岡は平安時代の名高い絵師で、大覚寺の庭の石組みも手がけたと伝えられる。荒廃した大覚寺の庭にあって、なお人の目を引く石に、名人の技の力を感じている。「かど」に、石の角と、風情、才気の意とを重ねている。
初句「庭の岩に」は、大覚寺の庭の岩に、の意で、字余りとなっている。
二句「目立つる人も」は、目を留める人も、の意である。
三句「なからまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、いなかっただろう、の意を表し、三句切れとなる。
四句「かどあるさまに」の「かど」は、石の「角」と、風情、才気の意の「才」を掛けている。
結句「立てし置かずは」の「ずは」は打消の仮定で、立てて置かなかったならば、の意を表し、倒置によって仮定を示している。
かど:石の「角」と、風情、才気の意を掛ける
かなをか:平安時代の絵師、巨勢金岡
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
この里や嵯峨の御狩の跡ならん 野山も果てはあせ変はりけり
- 次の歌
-
流れ見し岸の木立もあせ果てて 松のみこそは昔なるらめ