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流れ見し岸の木立もあせ果てて
松のみこそは昔なるらめ

歌の意味
かつて滝の流れを見た岸の木立もすっかり荒れ果てて、松だけが昔のままなのであろう。
鑑賞
雑歌 1425

詞書「滝のわたりの木立あらぬことになりて、松ばかり並み立ちたりけるを見て」
 大覚寺の滝のあたりの木立がすっかり変わってしまい、松ばかりが並んで立っていたのを見て詠んだ一首である。かつて滝の流れを見た岸の木立もすっかり荒れ果てて、松だけが昔のままの姿をとどめているのだろう、と詠む。
 本巻の第千四十八首でも、大覚寺の滝殿の荒廃が詠まれていた。移ろいゆく木立の中で、常緑の松だけが昔の面影を残しているという対比によって、時の流れの無常を表している。

 初句「流れ見し」は、かつて滝の流れを見た、の意である。
 二句「岸の木立も」は、岸辺の木立も、の意である。
 三句「あせ果てて」は、すっかり荒れ果てて、の意である。
 四句「松のみこそは」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の已然形「らめ」と係り結びをなす。
 結句「昔なるらめ」の「らめ」は現在推量の助動詞「らむ」の已然形で、昔のままなのであろう、と結ぶ。

あせはつ:すっかり衰える、荒れ果てる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
庭の岩に目立つる人もなからまし かどあるさまに立てし置かずは
次の歌
瀬を早み宮滝川を渡り行けば 心の底の澄む心地する