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聞きもせず束稲山の桜花
吉野の外にかかるべしとは

歌の意味
聞いたこともなかった。束稲山の桜の花よ。吉野のほかに、これほどの桜があろうとは。
鑑賞
雑歌 1442

詞書「陸奥国に、平泉に向かひて、束稲と申す山の侍るに、こと木は少なきやうに、桜の限り見えて、花の咲きたりけるを見てよめる」
 陸奥国の平泉の向かいに束稲という山があって、ほかの木は少ないように見えるほど一面の桜で、それが咲いていたのを見て詠んだ一首である。聞いたこともなかった、吉野のほかにこれほど見事な桜の山があろうとは、と束稲山の桜を讃えている。
 桜の名所といえば吉野であり、それを生涯愛した西行が、遠い奥州で吉野に匹敵する桜に出会った驚きと感動を詠んでいる。奥州藤原氏の栄えた平泉の、華やかな文化の一端をうかがわせる歌でもある。

 初句「聞きもせず」は、聞いたこともなかった、と言い切る初句切れである。
 二句「束稲山の」は、平泉の向かいにある束稲山の、の意である。
 三句「桜花」は、桜の花で、三句切れとなる。
 四句「吉野の外に」は、桜の名所吉野のほかに、の意である。
 結句「かかるべしとは」は、このようなものがあろうとは、の意で、倒置によって初句の内容を示している。

たばしねやま:陸奥国平泉の向かいにある山
作者
西行
出典
山家集
前の歌
波に敷く紅葉の色を洗ふゆゑに 錦の島と言ふにやあるらん
次の歌
奥になほ人見ぬ花の散らぬあれや 尋ねを入らん山ほととぎす