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磯菜摘みて波かけられて過ぎにける
鰐の住みける大磯の根を

歌の意味
磯菜を摘んでいて、波をかけられながら通り過ぎたことだ。鰐の住んでいた、大磯の岩の根もとを。
鑑賞
雑歌 1452

詞書なし
 磯菜を摘みながら、打ち寄せる波をかけられて通り過ぎたことだ、鰐が住んでいたという大磯の岩の根もとを、と詠む。
 鰐は鮫の古称で、恐ろしい海の生き物である。その鰐が住むという危うい磯の岩場を、波を浴びながら通り過ぎたという、海辺の旅の緊張と冒険を描いている。巻第七の巻末に置かれた一首であり、巻頭の第千四十二首が都の邸の庭に澄む月と秋風を詠んだのに対し、巻末は遠い海辺の荒い磯で結ばれ、都の雅から辺境の旅までを収めた本巻の広がりを示している。

 初句「磯菜摘みて」は、磯で海藻を摘んで、の意で、字余りとなっている。
 二句「波かけられて」は、波をかけられて、の意である。
 三句「過ぎにける」の「にける」は完了と過去で、通り過ぎたことだ、の意を表し、三句切れとなる。
 四句「鰐の住みける」の「鰐」は鮫の古称で、鰐が住んでいたという、の意である。
 結句「大磯の根を」は、大きな磯の岩の根もとを、の意で、倒置によって通り過ぎた場所を示している。

わに:鮫の古称
いそな:磯に生える海藻
作者
西行
出典
山家集
前の歌
腹赤釣るお□□□つきてすまふ波に けことおぼゆる入り取りの海人
次の歌
吉野山花の散りにし木のもとに とめし心は我を待つらん