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花の雪の庭に積もるに跡つけじ
門なき宿と言ひ散らさせて

歌の意味
花の雪が庭に積もっているので、足跡はつけまい。門のない家だと人々に言いふらさせておいて。
鑑賞
百首 1459

詞書は前の歌に続き「花十首」
 花十首の七首目である。散った花びらが雪のように庭に積もっているので、その上に足跡をつけまいと思い、人にはこの家には門がないと言いふらさせておこう、と詠む。
 庭に散り敷いた花を雪に見立て、それを誰にも踏み荒らさせまいとする心が詠まれている。門がないと言わせて人の訪れを断とうとする誇張に、花を惜しむ思いの深さが表れている。第千四百五十六首の、人には見せまいとする心とも通じている。

 初句「花の雪の」は、雪のように散り積もる花びらの意で、字余りとなっている。
 二句「庭に積もるに」は、庭に積もっているので、の意である。
 三句「跡つけじ」の「じ」は打消の意志で、足跡をつけまい、の意を表し、三句切れとなる。
 四句「門なき宿と」は、門のない家だと、の意で、人が訪ねて来られないようにするための口実である。
 結句「言ひ散らさせて」の「せ」は使役で、言いふらさせておいて、の意である。「散らす」は花の「散る」と縁のある語である。

いひちらす:言いふらす
やど:住まい、家
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山桜ほどなく見ゆるにほひかな 盛りを人に待たれ待たれて
次の歌
ながめつる朝の雨の庭の面に 花の雪敷く春の夕暮