おほかたの秋をば月に包ませて
吹きほころばす風の音かな
- 歌の意味
-
世間一般の秋の趣はみな月に包ませておいて、それを吹きほころばせる風の音であることよ。
- 鑑賞
-
百首 1478
詞書は前の歌に続き「月十首」
月十首の六首目である。秋の趣のおおよそは月に包み込ませておき、その包みを吹きほころばせるように、風の音が響いている、と詠む。
秋の情趣は月がほとんど包み込んでいるが、風の音だけはその包みからこぼれ出て、別の趣を伝えている、という見方による一首である。「包む」と「ほころばす」は、布の包みが縫い目からほころびる意で縁のある語であり、月と風とを布の包みのイメージで結びつけている。
初句「おほかたの」は、世間一般の、おおよその、の意である。
二句「秋をば月に」は、秋の趣を月に、の意で、「をば」は対象を強調する。
三句「包ませて」の「せ」は使役で、月に包み込ませて、の意である。
四句「吹きほころばす」は、吹いて縫い目をほころばせる、の意で、三句の「包む」と縁のある語である。
結句「風の音かな」は、風の音であることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。
おほかた:世間一般、おおよそ
ほころばす:縫い目をほどく、ほころびさせる
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
思ひ解けば千里の影も数ならず 至らぬ隈も月にあらせじ
- 次の歌
-
何事かこの世に経たる思ひ出を 問へかし人に月を教へん