筏士の波の沈むと見えつるは
雪を積みつつ下るなりけり
- 歌の意味
-
筏士が波に沈んでいくように見えたのは、筏に雪を積もらせながら川を下っていたのであったよ。
- 鑑賞
-
百首 1487
詞書は前の歌に続き「雪十首」
雪十首の五首目である。筏を操る人が波間に沈んでいくように見えたのは、筏の上に雪が積もり重くなりながら下っていたからであった、と詠む。
沈むように見えたものの正体を後から明かす、謎解きのような構成をもつ一首である。前歌と同じく川の雪を詠みつつ、前歌の停まった舟に対して、本歌は流れを下っていく筏を描いている。
初句「筏士の」は、筏を操って川を下る人の、の意である。
二句「波の沈むと」は、波に沈むと、の意である。
三句「見えつるは」の「つる」は完了で、見えたのは、の意である。
四句「雪を積みつつ」は、雪を積もらせながら、の意である。
結句「下るなりけり」の「なりけり」は、気づきの詠嘆で、下っていたのであったよ、の意を表す。
いかだし:筏を操って木材を運ぶ人
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
湊川苫に雪吹く友舟は むやひつつこそ夜を明かしけれ
- 次の歌
-
たまり居る梢の雪の春ならば 山里いかにもてなされまし