古典和歌stream

晴れやらで二村山に立つ雲は
比良の吹雪の名残なりけり

歌の意味
すっかりは晴れきらないで二村山にかかっている雲は、比良の山の吹雪の名残であったよ。
鑑賞
百首 1490

詞書は前の歌に続き「雪十首」
 雪十首の八首目である。晴れきらないまま二村山にかかっている雲は、比良の山に吹き荒れた吹雪の名残であった、と詠む。
 二村山は尾張国の歌枕、比良は近江国の雪深い山として知られる。遠く離れた二つの山を、吹雪の名残の雲によって結びつけた、広い空間をもつ一首である。

 初句「晴れやらで」の「やら」は、すっかり~しきる意、「で」は打消の接続助詞で、晴れきらないで、の意である。
 二句「二村山に」は、尾張国の歌枕である二村山に、の意である。
 三句「立つ雲は」は、立ちのぼりかかっている雲は、の意である。
 四句「比良の吹雪の」は、近江国の比良山に吹き荒れた吹雪の、の意である。
 結句「名残なりけり」の「なりけり」は気づきの詠嘆で、名残であったよ、の意を表す。

はれやる:すっかり晴れきる
なごり:物事が過ぎ去った後に残る気配
作者
西行
出典
山家集
前の歌
大原は芹生を雪の道に開けて 四方には人も通はざりけり
次の歌
雪しのぐ庵のつまをさし添へて 跡とめて来ん人を留めん