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古き妹が園に植ゑたる唐なづな
誰なづさへと生ほし立つらん

歌の意味
昔の恋人が庭に植えた唐なずなよ。いったい誰に馴れ親しめといって育てているのだろうか。
鑑賞
百首 1493

詞書「恋十首」
 恋十首の一首目である。かつての恋人が庭に植えて育てている唐なずなを見て、いったい誰に馴れ親しめと思って育てているのだろうか、と詠む。
 今は疎遠になった恋人が、ほかの誰かと親しむために花を育てているのではないかという、ひそかな嫉妬と未練が感じられる一首である。「なづな」と「なづさへ」の音を重ね、言葉の響きによって恋の思いを表している。

 初句「古き妹が」の「妹」は男性から恋人を呼ぶ語で、昔の恋人が、の意である。字余りとなっている。
 二句「園に植ゑたる」は、庭に植えている、の意である。
 三句「唐なづな」は、なずなの一種と見られる草花の名で、次の四句の「なづさへ」と音を重ねている。
 四句「誰なづさへと」の「なづさへ」は、馴れ親しむ意の「なづさふ」の命令形で、誰に馴れ親しめといって、の意である。
 結句「生ほし立つらん」の「らん」は現在推量で、育てているのだろうか、の意を表す。

いも:男性から恋人や妻を親しんで呼ぶ語
なづさふ:馴れ親しむ
おほしたつ:育て上げる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
悔しくも雪の深山へ分け入らで 麓にのみも年を積みける
次の歌
紅のよそなる色は知られねば 筆にこそまづ染めはじめつれ