我はただ返さでを着ん小夜衣
着て寝しことを思ひ出でつつ
- 歌の意味
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私はただ、裏返すことなくそのままに着ていよう、夜の衣を。あの人と共に着て寝たことを思い出しながら。
- 鑑賞
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百首 1501
詞書は前の歌に続き「恋十首」
恋十首の九首目である。夢で恋人に逢うために夜の衣を裏返して着るということはせず、ただそのままに着ていよう、共に寝た夜のことを思い出しながら、と詠む。
夜の衣を裏返して寝ると恋しい人を夢に見るという俗信は、小野小町の「いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣を返してぞ着る」の歌が古今集に見えるように、よく知られたものであった。本歌はその俗信にあえて従わず、共寝の記憶の残る衣をそのまま着ることを選んでおり、夢よりも現実の思い出を慕う心が詠まれている。
初句「我はただ」は、私はただ、の意で、恋の俗信に従う人々と自分とを区別している。
二句「返さでを着ん」の「で」は打消の接続助詞、「を」は語調を強める間投助詞、「ん」は意志で、裏返さずに着よう、の意である。
三句「小夜衣」は、夜寝るときに着る衣の意で、三句切れとなる。
四句「着て寝しことを」の「し」は過去で、共に着て寝たことを、の意である。
結句「思ひ出でつつ」の「つつ」は継続で、思い出しながら、の意である。
さよごろも:夜寝るときに着る衣
かへす:衣を裏返す
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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月を憂しと眺めながらも思ふかな その夜ばかりの影とやは見し
- 次の歌
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川風に千鳥鳴きけん冬の夜は 我が思ひにてありけるものを