月にいかで昔のことを語らせて
影に添ひつつ立ちも離れじ
- 歌の意味
-
月になんとかして昔のことを語らせて、その光に寄り添いながら、立ち離れることはするまい。
- 鑑賞
-
百首 1505
詞書は前の歌に続き「述懐十首」
述懐十首の三首目である。昔を知る月になんとかして過ぎた日のことを語らせ、その光に寄り添って離れずにいたい、と詠む。
変わらずに空にある月を、昔を知る語り手とみなし、過ぎ去った日々を懐かしむ心を詠んだ一首である。第千四百九十六首の「たちも離れず」と同じ表現を用いつつ、恋人のそばを離れまいとした恋の心を、ここでは月の光のそばを離れまいとする懐旧の心へと移している。
初句「月にいかで」の「いかで」は、なんとかして、の意で、字余りとなっている。
二句「昔のことを」は、過ぎた昔のことを、の意である。
三句「語らせて」の「せ」は使役で、月に語らせて、の意である。
四句「影に添ひつつ」の「影」は月の光の意で、光に寄り添いながら、の意である。
結句「立ちも離れじ」の「じ」は打消の意志で、立ち離れることはするまい、の意を表す。
かげ:月の光
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
山深く心はかねて送りてき 身こそ憂き世を出でやらねども
- 次の歌
-
憂き世とし思はでも身の過ぎにける 月の影にもなづさはりつつ