雲につきて浮かれのみゆく心をば
山にかけてを留めんとぞ思ふ
- 歌の意味
-
雲につき従って、さまよい出てばかりゆく心を、山につなぎかけてでも、とどめようと思う。
- 鑑賞
-
百首 1507
詞書は前の歌に続き「述懐十首」
述懐十首の五首目である。雲について行くようにさまよい出てばかりいる心を、山につなぎかけてでも、とどめておこうと思う、と詠む。
定まらずにさまよう心を、山に掛けとめることで落ち着かせようとする、修行の心を詠んだ一首である。浮かれ出る心と、それをとどめようとする心との葛藤が描かれている。第千四百五十三首の「とめし心」のように、ここでも心を「とむ」ことが詠まれている。
初句「雲につきて」は、雲につき従って、の意で、字余りとなっている。
二句「浮かれのみゆく」は、さまよい出てばかりゆく、の意である。
三句「心をば」の「をば」は対象を強調し、その心を、の意である。
四句「山にかけてを」の「を」は語調を強める間投助詞で、山に掛けてでも、の意である。
結句「留めんとぞ思ふ」の「ぞ」は係助詞で、「思ふ」の連体形で結ぶ係り結びとなり、とどめようと思う、の意を強めている。
うかる:心が落ち着かずさまよい出る
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
憂き世とし思はでも身の過ぎにける 月の影にもなづさはりつつ
- 次の歌
-
捨てて後はまぎれし方は覚えぬを 心のみをば世にあらせける