捨てて後はまぎれし方は覚えぬを
心のみをば世にあらせける
- 歌の意味
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世を捨ててからは、俗事にまぎれていたころのことはもう覚えていないのに、心だけは、なおこの世にとどめていたことだ。
- 鑑賞
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百首 1508
詞書は前の歌に続き「述懐十首」
述懐十首の六首目である。世を捨てた後は、俗事にまぎれていたころのことは忘れてしまったのに、心だけはなおこの世にとどまらせていた、と詠む。
出家して身は俗世から離れても、心はなお世に残っているという、世を捨てきれない自己を見つめた一首である。第千五百四首が心は山へ送り身は世に残ると詠んだのとは逆に、本歌では身は世を捨てたのに心だけが世に残っており、心と身の関係が反転した構図となっている。
初句「捨てて後は」は、世を捨てた後は、の意で、字余りとなっている。
二句「まぎれし方は」の「まぎる」は、俗事に取りまぎれる意で、俗事にまぎれていた方面のことは、の意である。
三句「覚えぬを」の「を」は逆接で、覚えていないのに、の意である。
四句「心のみをば」は、心だけを、の意で、「をば」は対象を強調する。
結句「世にあらせける」の「せ」は使役、「ける」は詠嘆の連体形による連体止めで、この世にとどまらせていたことだ、の意を表す。
まぎる:取りまぎれる、他のことに気を取られる
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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雲につきて浮かれのみゆく心をば 山にかけてを留めんとぞ思ふ
- 次の歌
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塵つかでゆがめる道を直くなして 行く行く人を世に仕へばや