古典和歌stream

現をも現とさらに思へねば
夢をも夢と何か思はん

歌の意味
現実をも現実だとまったく思えないのだから、夢をどうして夢だと思うことがあろうか。
鑑賞
百首 1515

詞書は前の歌に続き「無常十首」
 無常十首の三首目である。現実さえ確かな現実とは思えないのだから、夢を夢と区別して思うこともない、と詠む。
 現実と夢との境が失われるほどに、この世のはかなさを深く感じ取った一首である。「現」と「夢」をそれぞれ二度ずつ繰り返す対句的な構成によって、現実も夢も同じくはかないものとする無常観を表している。

 初句「現をも」は、現実をも、の意である。
 二句「現とさらに」は、現実だとまったく、の意で、初句の「現」を繰り返している。
 三句「思へねば」の「ね」は打消の已然形で、思えないので、の意である。
 四句「夢をも夢と」は、初句と二句の「現をも現と」と対をなし、夢を夢だと、の意である。
 結句「何か思はん」の「か」は係助詞で、「ん」の連体形で結ぶ係り結びとなり、どうして思うことがあろうか、という反語を表す。

うつつ:現実、目覚めている状態
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ささがにの糸に貫く露の玉を 懸けて飾れる世にこそありけれ
次の歌
さらぬことも跡形なきをわきてなど 露をあだにも言ひも置きけん