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汀近く引き寄せらるる大網に
幾瀬のものの命こもれり

歌の意味
汀の近くに引き寄せられてくる大網の中には、いくつもの瀬に住んでいた生き物たちの命がこもっている。
鑑賞
百首 1519

詞書は前の歌に続き「無常十首」
 無常十首の七首目である。岸辺に引き寄せられてくる大網の中には、多くの瀬に住んでいた魚たちの命がこもっている、と詠む。
 網に捕らえられて岸へと引かれていく魚の姿に、死へと引き寄せられていく命のはかなさを見た一首である。前歌に続いて魚を詠み、前歌の干上がる池の一匹から、ここでは大網にこもる多くの命へと規模を広げている。

 初句「汀近く」は、水際の近くに、の意で、字余りとなっている。
 二句「引き寄せらるる」の「るる」は受身で、引き寄せられてくる、の意である。
 三句「大網に」は、大きな網の中に、の意である。
 四句「幾瀬のものの」は、いくつもの瀬に住む生き物の、の意である。
 結句「命こもれり」の「り」は存続で、命がこもっている、の意を表す。

みぎは:水際
せ:川の浅く流れの速い所
作者
西行
出典
山家集
前の歌
水干たる池に潤ふ滴りを 命に頼むいろくづや誰
次の歌
うらうらと死なんずるなと思ひ解けば 心のやがてさぞと答ふる