古典和歌stream

友になりて同じ湊を出で舟の
行方も知らず漕ぎ別れぬる

歌の意味
連れになって同じ湊を出た舟が、互いの行方も知らないまま、漕ぎ別れてしまったことだ。
鑑賞
百首 1544

詞書は前の歌に続き「雑十首」
 雑十首の二首目である。連れ立って同じ湊を出た舟が、互いの行方も知らないままに漕ぎ別れてしまった、と詠む。
 同じところから共に出発しながら、やがて別々の道を行き、行方も知れなくなる舟の姿に、人生における人との別れを重ねた一首と見られる。雪十首の第千四百八十六首で身を寄せ合って夜を明かした「友舟」に対し、本歌は友となった舟の別れを詠んでいる。

 初句「友になりて」は、連れになって、の意で、字余りとなっている。
 二句「同じ湊を」は、同じ港を、の意である。
 三句「出で舟の」は、出ていく舟が、の意である。
 四句「行方も知らず」は、互いの行方も知らないで、の意である。
 結句「漕ぎ別れぬる」の「ぬる」は完了の連体形による連体止めで、漕ぎ別れてしまったことだ、の意を表す。

みなと:港
ゆくへ:行く先
作者
西行
出典
山家集
前の歌
沢の面に更けたる鶴の一声に 驚かされて千鳥鳴くなり
次の歌
滝落つる吉野の奥の宮川の 昔を見けん跡慕はばや