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吹き来れば香をなつかしみ梅の花
散らさぬほどの春風もがな

歌の意味
風が吹いてくると梅の香に心ひかれるので、花を散らさない程度の春風があってほしいものだ。
鑑賞
巻第一 春歌 9

 春風が運ぶ梅の香に心ひかれながら、その風が花を散らしてしまうことを惜しみ、香だけを運ぶ程よい風を願った歌である。香を求めつつ花も惜しむという、相反する願いがやさしく詠まれている。
 作者は源時綱とされる。ここから梅の歌が二首続く。

 初句「吹き来れば」は、風が吹いてくるとの意で、主語の春風は結句で明かされる。
 二句「香をなつかしみ」は、名詞に「を」と形容詞の語幹と「み」が付いた形で、香が慕わしいのでの意を表す。
 三句「梅の花」は、香を中心に詠まれる春の花で、次歌の初句「梅の花」と同じ語を共有している。
 四句「散らさぬほどの」は、花を散らさない程度のの意で、香は運んでほしいが花は散らしたくないという微妙な願いを表す。
 結句「春風もがな」の「もがな」は願望の終助詞である。巻頭の第一首の結句「春風ぞ吹く」と同じ春風を、ここでは願いの対象として詠んでいる。

か:香り
出典
詞花和歌集
前の歌
子の日すと春の野ごとに尋ぬれば 松にひかるる心地こそすれ
次の歌
梅の花匂ひを道のしるべにて 主も知らぬ宿に来にけり