取りつなぐ人もなき野の春駒は
霞にのみやたなびかるらむ
- 歌の意味
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綱で取りつなぐ人もいない野に放たれた春の駒は、ただ霞に引かれてたなびいているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第一 春歌 11
春の野に放たれ、誰にもつながれていない馬が、霞に包まれて見え隠れする様子を詠んだ歌である。つながれていない駒が霞にだけ引かれているように見えるという見立てに、のどかな春の野の情景がある。
作者は藤原盛経とされる。ここから春駒の歌が三首続く。
初句「取りつなぐ」は、手綱で馬をつなぎとめる意である。結句の「たなびかる」と言葉の上で響き合う。
二句「人もなき野の」は、馬をつなぐ人もいない広い野で、放し飼いの情景を示す。
三句「春駒は」は、春の野に放たれた馬である。次歌の四句「つながぬ駒」、第十三首の四句「駒のけしき」と、駒の歌が続く。
四句「霞にのみや」は、係助詞「や」による疑問で、ただ霞にばかりの意を表す。
結句「たなびかるらむ」は、四句の「や」を受けて推量の助動詞「らむ」の連体形で結ぶ係り結びである。「たなびく」に「引く」の意を響かせ、人ではなく霞に引かれる駒と見たところに機知がある。
はるごま:春の野に放し飼いにされている馬
たなびく:霞などが横に長く引く
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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梅の花匂ひを道のしるべにて 主も知らぬ宿に来にけり
- 次の歌
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真菰草つのぐみわたる沢辺には つながぬ駒も離れざりけり