古典和歌stream

佐保姫の糸染めかくる青柳を
吹きな乱りそ春の山風

歌の意味
佐保姫が糸を染めて掛けている青柳を、吹き乱さないでおくれ、春の山風よ。
鑑賞
巻第一 春歌 14

 春の女神である佐保姫が染めて掛けた糸に柳の枝を見立て、それを吹き乱さないでほしいと山風に呼びかけた歌である。柳のしなやかな緑の枝を、女神の手仕事として美しく描いている。
 ここから青柳の歌が三首続く。

 初句「佐保姫の」は、奈良の佐保山を神格化した春の女神で、秋の竜田姫と対をなす。
 二句「糸染めかくる」は、糸を染めて掛けている意で、柳の枝を糸に見立てる。
 三句「青柳を」は、芽吹いたばかりの緑の柳である。次歌の結句「青柳の糸」と語を共有している。
 四句「吹きな乱りそ」は、「な」と「そ」で挟む禁止の形で、吹き乱さないでくれの意である。
 結句「春の山風」は、呼びかけの対象を最後に置いた体言止めである。

さほひめ:春をつかさどる女神。佐保山を神格化したもの
あをやぎ:芽吹いて青々とした柳
作者
平兼盛
出典
詞花和歌集
前の歌
萌え出づる草葉のみかは小笠原 駒のけしきも春めきにけり
次の歌
いかなれば氷は解くる春風に 結ぼほるらむ青柳の糸