古典和歌stream

白雲はさも立たば立て紅の
今ひとしほを君し染むれば

歌の意味
白雲は、そのように立つのなら立てばよい。紅の色をさらにひとしお深く、あなたが染めてくださるのだから。
鑑賞
巻第一 春歌 20

詞書「返し」
 前歌への返歌で、白雲が隔てるなら隔ててもかまわない、あなたが紅の色を一段と深く染めてくださるのだから、と応じた歌である。前歌の「心にぞ染む」を受け、相手の言葉によって花の色がいっそう深まったと喜んでいる。
 作者は康資王母とされ、第十八首から続く三首の贈答をこの歌が結んでいる。

 初句「白雲は」は、第十八首の四句、前歌の初句を受け、三首を通じて白雲が隔てるものとして詠まれる。
 二句「さも立たば立て」は、そのように立つなら立てばよいの意で、命令形を用いた放任の言い方である。ここで句切れとなる。
 三句「紅の」は、贈答三首に共通する語で、ここでは染め色としての紅に重心が移っている。
 四句「今ひとしほを」の「ひとしほ」は、染め汁に一度浸すことで、さらに一段と色を深める意である。
 結句「君し染むれば」は、強意の副助詞「し」と已然形に「ば」が付いた確定条件で、あなたが染めるのだからの意である。「紅」「ひとしほ」「染む」が染色の縁語となる。

ひとしほ:染め汁に一度浸すこと。一段と程度が増すこと
出典
詞花和歌集
前の歌
白雲は立ち隔つれど紅の 薄花桜心にぞ染む
次の歌
朝まだき霞なこめそ山桜 尋ね行く間のよそ目にも見む