古典和歌stream

朝まだき霞なこめそ山桜
尋ね行く間のよそ目にも見む

歌の意味
まだ夜の明けきらない早朝から、霞よ、山桜を包み隠さないでおくれ。訪ねて行く途中の遠目にも見たいのだから。
鑑賞
巻第一 春歌 21

 山桜を訪ねて行く途中でも遠くから花を眺めたいので、朝早くから霞よ立ちこめないでほしいと願った歌である。花を待ちきれない心が、霞への呼びかけとなって表れている。
 次歌の詞書「同じ歌合によめる」から、京極前太政大臣藤原師実家の歌合で詠まれた歌と考えられる。

 初句「朝まだき」は、夜が明けきらない早朝の意である。
 二句「霞なこめそ」は、「な」と「そ」で挟む禁止の形で、霞よ立ちこめるなの意である。ここで句切れとなる。第十四首の「吹きな乱りそ」と同じ禁止の呼びかけである。
 三句「山桜」は、山に咲く桜で、霞に隠されることを恐れる対象である。
 四句「尋ね行く間の」は、花を訪ねて行く途中の意である。
 結句「よそ目にも見む」は、遠くからでも見ようの意で、「む」は意志を表す。

よそめ:離れた所から見ること。遠目
作者
祐子内親王家紀伊
出典
詞花和歌集
前の歌
白雲はさも立たば立て紅の 今ひとしほを君し染むれば
次の歌
白雲と見ゆるにしるしみ吉野の 吉野の山の花盛りかも