春ごとに心をそらになすものは
雲居に見ゆる桜なりけり
- 歌の意味
-
春が来るたびに私の心を上の空にさせるものは、空高く雲のあたりに見える桜であったのだ。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 25
毎年春になると心が落ち着かなくなるのは、空高く見える桜のせいだったと詠んだ歌である。上の空になる心と、空に見える桜とを結びつけた機知がある。
作者は戒秀とされる。前歌と同じ結句で、桜の正体に気づく形が二首続く。
初句「春ごとに」は、毎年春が来るたびにの意である。第三十二首の初句にも同じ語が見える。
二句「心をそらに」の「そら」は、上の空の意と、空の意を掛ける掛詞である。
三句「なすものは」は、そうさせるものはの意で、答えを結句に置く構成である。
四句「雲居に見ゆる」は、空高くに見えるの意で、二句の「そら」と縁語になっている。宮中の意も感じさせ、前歌の「九重」と通じる。
結句「桜なりけり」は、前歌と同じ結句で、気づきの「けり」で結ぶ。
そら:上の空の意と、空の意を掛ける
くもゐ:空高いところ。宮中の意にも用いる
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
九重に立つ白雲と見えつるは 大内山の桜なりけり
- 次の歌
-
白河の春の梢を見渡せば 松こそ花の絶え間なりけれ