いにしへの奈良の都の八重桜
今日九重に匂ひぬるかな
- 歌の意味
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昔の都であった奈良の八重桜が、今日はこの都の宮中で美しく咲き匂っていることだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌 29
詞書「一条院御時、奈良の八重桜を人の奉りて侍りけるを、その折御前に侍りければ、その花を賜ひて、歌よめと仰せられければよめる」
一条天皇の時代、奈良から宮中に献上された八重桜を受け取る役を務めた際、歌を詠むよう命じられ、その場で詠んだ歌である。古都奈良と今の都、八重と九重を対比させ、献上された花の晴れやかさをたたえている。
『伊勢大輔集』によれば、この役は紫式部から新参の伊勢大輔に譲られたものという。『小倉百人一首』にも採られた名歌である。
初句「いにしへの」は、昔のの意で、古い都であった奈良を導く。
二句「奈良の都の」は、平城京のあった旧都である。第三首や第十六首の「古里」と同じく、旧都の花が詠まれている。
三句「八重桜」は、花びらの重なった桜で、四句の「九重」と数の上で対をなしている。
四句「今日九重に」は、「九重」が宮中を表す。「いにしへ」と「今日」、「八重」と「九重」の対比が一首の要となっている。第二十四首の初句「九重に」とも通じる。
結句「匂ひぬるかな」は、完了の「ぬる」と詠嘆の「かな」で、花の美しく咲き映える様子を称えている。
ここのへ:宮中。皇居
にほふ:色美しく咲き映える
- 作者
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伊勢大輔
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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池水の汀ならずは桜花 影をも波に折られましやは
- 次の歌
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古里に訪ふ人あらば山桜 散りなむ後を待てと答へよ