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古里に訪ふ人あらば山桜
散りなむ後を待てと答へよ

歌の意味
故郷で私のことを尋ねる人がいたら、山桜が散ってしまった後まで待てと答えておくれ。
鑑賞
巻第一 春歌 30

 山の桜のもとにいる作者が、故郷で自分の帰りを尋ねる人がいたら、花が散るまでは帰らないと伝えてほしいと言い置いた歌である。花に心を奪われて帰りを忘れる風雅な心が、軽やかに表現されている。

 初句「古里に」は、ここでは自分の住む家、故郷の意である。
 二句「訪ふ人あらば」は、私の消息を尋ねる人がいたらの意で、仮定条件である。
 三句「山桜」は、作者が今見ている桜で、四句へと続いていく。
 四句「散りなむ後を」は、強意の「な」と推量の「む」で、きっと散ってしまうであろうその後の意である。
 結句「待てと答へよ」は、命令形を重ねて、伝言を託す形で結んでいる。

とふ:訪ねる。安否を尋ねる
作者
藤原教長
出典
詞花和歌集
前の歌
いにしへの奈良の都の八重桜 今日九重に匂ひぬるかな
次の歌
桜花手ごとに折りて帰るをば 春の行くとや人は見るらむ