古典和歌stream

桜花風にし散らぬものならば
思ふことなき春にぞあらまし

歌の意味
桜の花が風に散らないものであるならば、春は何の物思いもない季節であっただろうに。
鑑賞
巻第一 春歌 36

 桜が風に散ることさえなければ、春は何の心配もない季節であっただろうにと、散る花への嘆きを詠んだ歌である。『古今集』の在原業平の「世の中にたえて桜のなかりせば」の発想に通じ、花ゆえの物思いを別の方向から言い表している。

 初句「桜花」は、前歌の初句と同じ語で、桜の歌が続く。
 二句「風にし散らぬ」の「し」は強意の副助詞で、風に散るということさえなければの意を強める。
 三句「ものならば」は、仮定条件で、第二十三首の三句と同じ形である。
 四句「思ふことなき」は、物思いのないの意である。
 結句「春にぞあらまし」は、係助詞「ぞ」を受けて反実仮想の「まし」の連体形で結ぶ係り結びである。

おもふこと:物思い。心配事
作者
大中臣能宣
出典
詞花和歌集
前の歌
桜花散らさで千代も見てしがな 飽かぬ心はさてもありやと
次の歌
桜花散り敷く庭を払はねば 消えせぬ雪となりにけるかな