古典和歌stream

老いてこそ春の惜しさはまさりけれ
今いくたびも逢はじと思へば

歌の意味
年老いてからこそ、春を惜しむ気持ちはいっそう強くなるものだ。この先もう何度も春に会うことはないだろうと思うので。
鑑賞
巻第一 春歌 49

 年を取ってからの方が、去っていく春を惜しむ気持ちが強くなると詠んだ歌である。残りの人生で巡り会える春の数を思う心が、春を惜しむ思いを深めている。
 作者は橘俊成とされる。巻末近くに置かれ、春を惜しむ歌として次の巻末歌へと続く。

 初句「老いてこそ」は、年老いてからこその意で、係助詞「こそ」が強調する。
 二句「春の惜しさは」は、春が過ぎるのを惜しむ気持ちである。
 三句「まさりけれ」は、初句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。ここで句切れとなる。
 四句「今いくたびも」は、この先何度もの意で、残された年月を思う。
 結句「逢はじと思へば」は、「じ」が打消推量で、理由を後に置く倒置の形である。第四十六首の結句「あらじと思へば」と同じ形をとる。

をしさ:惜しむ気持ち
出典
詞花和歌集
前の歌
咲きしより散り果つるまで見しほどに 花のもとにて二十日経にけり
次の歌
惜しむとて今宵書き置く言の葉や あやなく春の形見なるべき