古典和歌stream

年を経てかけしあふひは変はらねど
今日のかざしはめづらしきかな

歌の意味
長年にわたって掛けてきた葵は変わらないけれども、今日の挿頭は新鮮に感じられることだ。
鑑賞
巻第二 夏歌 53

 四月の賀茂祭(葵祭)で飾る葵を詠んだ歌である。毎年同じように掛けてきた葵は少しも変わらないのに、今日の挿頭だけは格別にめずらしく感じられるという。何らかの新たな立場や思いをもって祭に臨んだ感慨とも読める。
 前歌までの更衣、卯の花に続き、四月の行事である賀茂祭へと配列が進む。次歌の第五十四首も神祭を詠み、神事の歌が二首並んでいる。

 初句「年を経て」は、長い歳月を重ねてきたことを示す。
 二句「かけしあふひは」の「あふひ」は、賀茂祭の「葵」と「逢ふ日」の掛詞と解される。祭の日に人と逢う意を重ねている。
 三句「変はらねど」は逆接で、変わらない葵と四句以下の新鮮さとを対比させる。次の第五十五首の結句「変はらざりけれ」とも響き合う。
 四句「今日のかざしは」は、初句の「年を経て」と対になり、長い年月と今日一日とを対照している。
 結句「めづらしきかな」は、新鮮で心ひかれる意で、詠嘆の終助詞「かな」で結ぶ。

あふひ:賀茂祭で飾る葵と、逢ふ日を掛ける
かざし:髪や冠に挿す草花の飾り
かく:葵などを掛けて飾る
出典
詞花和歌集
前の歌
雪の色を盗みて咲ける卯の花は 冴えてや人に疑はるらむ
次の歌
榊とる夏の山路や遠からむ ゆふかけてのみ祭る神かな