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ほととぎす鳴く音ならでは世の中に
待つこともなき我が身なりけり

歌の意味
ほととぎすの鳴く声以外には、この世の中で待つことなど何もない我が身であったよ。
鑑賞
巻第二 夏歌 56

 世の中にもはや何の期待も持たない身にとって、ほととぎすの声だけが待つものだという歌である。世間から離れた寂しさと、季節の声だけに心を寄せる姿が浮かぶ。
 前歌の第五十五首と「待つ」「我が身」を共有する。前歌が変わらず待つ心を詠んだのに対し、本歌は待つものがほととぎすしかないと詠み、同じ主題を裏返している。

 初句「ほととぎす」は、前歌から続くほととぎすの主題を受ける。
 二句「鳴く音ならでは」は、「…でなくては」の意で、ほととぎすの声だけを限定して取り出す。
 三句「世の中に」は、人の世全体を指し、二句の限定と対照をなす。
 四句「待つこともなき」は、前歌の「待つ心」と響き合う。
 結句「我が身なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、前歌と同じく「我が身」で結ぶ。

なくね:鳴く声
よのなか:人の世、世間
出典
詞花和歌集
前の歌
昔にもあらぬ我が身にほととぎす 待つ心こそ変はらざりけれ
次の歌
今年だに待つ初声をほととぎす 世にはふるさで我に聞かせよ