鳴く声も聞こえぬものの悲しきは
忍びに燃ゆる蛍なりけり
- 歌の意味
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鳴く声も聞こえないものでありながら悲しいのは、人知れずひそかに燃えている蛍であったよ。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 73
声を立てて鳴くこともなく、ただ黙って光を放つ蛍の姿に、人に知られぬよう思いを胸に秘める忍ぶ恋の哀しさを重ねた歌である。
次歌の第七十四首とともに蛍の歌が二首並び、結句「蛍なりけり」を共有している。本歌が蛍に忍ぶ心を見るのに対し、次歌は蛍を篝火に見立てる叙景であり、同じ素材を心情と景で詠み分けている。
初句「鳴く声も」は、声で思いを訴える虫や鳥と対比する。
二句「聞こえぬものの」は、声を出さない存在であることを示す。
三句「悲しきは」は、一首の主題である哀しさを提示する。
四句「忍びに燃ゆる」は、ひそかに光を放つ蛍の姿に、人知れず燃える恋心を重ねている。
結句「蛍なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。次歌と同じ結句である。
しのぶ:人目を避けてひそかにする
もゆ:燃える、思いが燃え立つ
- 作者
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藤原高遠
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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種まきしわがなでしこの花盛り いく朝露のおきて見つらむ
- 次の歌
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五月闇鵜川にともす篝火の 数ますものは蛍なりけり