風吹けば川辺涼しく寄る波の
立ち返るべき心地こそせね
- 歌の意味
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風が吹くと川辺は涼しく、寄せては返す波のように、ここから立ち帰ろうという気にはとてもなれないことだ。
- 鑑賞
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巻第二 夏歌 75
夏の暑さの中、風が吹いて涼しい川辺から立ち去りがたい心を詠んだ納涼の歌である。寄せては返す波を持ち出しながら、自分は帰る気になれないと打ち消すところに面白みがある。
結句「心地こそせね」は、第六十一首と第六十三首の結句「心地こそすれ」を打ち消した形であり、本巻の中で肯定と否定の対をなしている。次歌の第七十六首も水辺の涼しさを詠み、納涼の歌が二首続く。
初句「風吹けば」は、涼しさの原因を示す。
二句「川辺涼しく」は、川風による涼しさを示す。
三句「寄る波の」は、四句の「立ち返る」を導く序詞のはたらきをしている。
四句「立ち返るべき」は、波が寄せては返すことと、人が帰ることを重ねている。
結句「心地こそせね」は、係助詞「こそ」と打消の助動詞「ず」の已然形「ね」による係り結びである。第六十一首、第六十三首の「心地こそすれ」と対照をなす。
たちかへる:波が寄せては返す意から、もとの所へ帰ること
かはべ:川のほとり
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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五月闇鵜川にともす篝火の 数ますものは蛍なりけり
- 次の歌
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杣川の筏の床の浮き枕 夏は涼しきふしとなりけり