- 歌の意味
-
川上で夕立が降っているらしい。水屑をせき止めている簗の瀬のさざ波が、騒がしく立ち騒いでいる。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 78
目の前の簗瀬のさざ波の騒ぎから、見えない川上の夕立を推し量った歌である。夏の夕方の急な天候の変化を、川の様子を通してとらえた鮮やかな叙景である。
前歌の第七十七首の夏の夜の月に続き、夏の夕立が置かれている。第六十五首が川の音から五月雨の増水を知ったのと同じく、本歌も川の様子から雨を知る構図である。
初句「川上に」は、目には見えない上流を示す。
二句「夕立すらし」の「らし」は、根拠に基づく推定で、ここで句切れとなる。
三句「水屑せく」は、流れてくる水屑をせき止める簗の様子をいう。
四句「簗瀬のさ波」は、推定の根拠となる目前の光景である。
結句「立ち騒ぐなり」の「なり」は音による推定で、波の騒ぐ音が耳に届くことを示す。
みくづ:水中のごみ、流れてくる物
せく:せき止める
やなせ:魚をとる簗を仕掛けた瀬
- 作者
-
曾禰好忠
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
待つほどに夏の夜いたく更けぬれば 惜しみもあへぬ山の端の月
- 次の歌
-
常よりも嘆きやすらむ七夕は 逢はまし暮れをよそに眺めて