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山城の鳥羽田の面を見渡せば
ほのかに今朝ぞ秋風は吹く

歌の意味
山城の鳥羽の田の面を見渡すと、今朝はほのかに秋風が吹いているのがわかる。
鑑賞
巻第三 秋歌 82

詞書「題しらず」
 『詞花和歌集』巻第三秋の巻頭に置かれた曾禰好忠の歌である。広々とした鳥羽の田を見渡し、稲の葉のかすかななびきから、今朝はじめて吹いた秋風を感じ取っている。
 立秋の風を目ではなく肌と景色の揺れで知るという趣向で、田園の風景を素材に初秋の訪れをとらえた点に好忠らしい新しさがある。秋の巻の始まりにふさわしい一首である。

 初句「山城の」は国名を示し、都の南の実景であることを明らかにする。秋風の到来を詠む本歌は、秋の過ぎ去りを詠む巻末の第百三十九首と、来る秋と行く秋として呼応している。
 二句「鳥羽田の面を」は鳥羽の田の表面のことで、一面に広がる稲田を指す。「を」は見渡す対象を示す。
 三句「見渡せば」は已然形に「ば」が付いた確定条件で、見渡したところという意である。
 四句「ほのかに今朝ぞ」は、かすかに、今朝こそという意である。係助詞「ぞ」が強調し、結句の連体形「吹く」で結ぶ係り結びとなる。
 結句「秋風は吹く」は、秋の到来を告げる風である。次歌の第八十三首の結句「秋の初風」と、秋風の主題を共有して巻頭の二首を形づくる。

とばた:山城国鳥羽(現在の京都市南部)の田、鳥羽田
作者
曾禰好忠
出典
詞花和歌集
前の歌
虫の音もまだうちとけぬ草むらに 秋をかねても結ぶ露かな
次の歌
君住まば訪はましものを津の国の 生田の森の秋の初風