たなばたに衣も脱ぎて貸すべきに
ゆゆしとや見む墨染の袖
- 歌の意味
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七夕の星に衣を脱いで貸すべきところだが、墨染めの僧衣の袖では、織女は不吉だと思うだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 85
詞書「御髪下ろさせ給ひて後、七月七日よませ給ひける」
出家した後の花山院が、七月七日に詠んだ歌である。七夕には織女に衣を貸す、つまり手向けるという風習があり、自分もそうすべきだが、今の自分の衣は墨染めの僧衣であると気づく。
逢瀬を喜ぶ星に喪の色を思わせる僧衣を差し出すのははばかられるという心づかいに、俗世を離れた身の哀感がにじむ。前歌の糸の手向けから、衣の手向けへと七夕の習俗を広げている。
初句「たなばたに」は織女に対してという意で、手向けの相手を示す。
二句「衣も脱ぎて」は、衣を脱いでまでという意で、七夕に衣を貸す風習を踏まえる。
三句「貸すべきに」は、貸すのが当然なのにという逆接で、下の句の迷いへつながる。
四句「ゆゆしとや見む」は、不吉だと見るだろうかという推量で、「や」は疑問を表す。
結句「墨染の袖」は体言止めで、出家の身を象徴する。前歌の第八十四首の蜘蛛の糸の手向けと、織女への手向けという趣向を共有している。
すみぞめ:墨で染めたような黒い色、僧衣や喪服の色
みぐしおろす:髪を剃って出家する
- 作者
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花山院
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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萩の葉にすがく糸をもささがには たなばたにとや今朝は引くらむ
- 次の歌
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たなばたに心は貸すと思はねど 暮れゆく空はうれしかりけり