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引く駒に影を並べて逢坂の
関路よりこそ月は出でけれ

歌の意味
都へ引かれてゆく駒と姿を並べるようにして、逢坂の関の道から月は昇ってきたのだった。
鑑賞
巻第三 秋歌 102

詞書「関白前太政大臣の家にて、八月十五夜の心をよめる」
 原文の作者表記は番号外作者であるが、『詞花和歌集』では作者を藤原朝隆とする。関白前太政大臣すなわち藤原忠通の家で、八月十五夜の心を詠んだ歌である。
 八月十五日ごろには、諸国から献上される馬を逢坂の関で迎える駒迎えの行事があった。その駒と並ぶように、東の逢坂の関の方から満月が昇ってくるという、行事と名月を重ねた華やかな歌である。

 初句「引く駒に」は、引かれてゆく馬にという意で、駒迎えの行事を踏まえる。
 二句「影を並べて」は、姿を並べてという意で、月の光と駒の姿が並ぶさまを示す。
 三句「逢坂の」は、山城と近江の境にある逢坂の関のことで、都の東の出入口である。本巻の第百二十三首も駒迎えを逢坂で詠む。
 四句「関路よりこそ」は、関所の道からこそという意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「出でけれ」と呼応する係り結びである。
 結句「月は出でけれ」は、月は昇ったのだったという詠嘆で、「こそ」の結びとして已然形をとる。

こまむかへ:八月に諸国から献上される馬を逢坂の関まで出迎えた宮中行事
せきぢ:関所へ通じる道
出典
詞花和歌集
前の歌
秋の夜は月に心のひまぞなき 出づるを待つと入るを惜しむと
次の歌
秋の夜のつゆも曇らぬ月を見て 置きどころなきわが心かな