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秋の夜の月待ちかねて思ひやる
心いくたび山を越ゆらむ

歌の意味
秋の夜の月の出を待ちかねて、月を思いやる私の心は、いったい何度山を越えたことだろう。
鑑賞
巻第三 秋歌 104

詞書「月を待つ心をよめる」
 大江嘉言が、月を待つ心を題として詠んだ歌である。
 山の向こうから月が昇るのを待ちきれず、心だけが何度も山を越えて月を迎えに行くという。待つ心の焦りを、心が山を越えるという大胆な表現で示した歌である。前歌の第百一首が詠んだ「出づるを待つ」心を、さらに具体的に描いている。

 初句「秋の夜の」は、前歌と同じく秋の夜の月を詠み起こす。
 二句「月待ちかねて」は、月の出を待ちきれずにという意である。
 三句「思ひやる」は、遠くのものに思いをはせるという意で、四句の「心」にかかる。
 四句「心いくたび」は、心が何度という意で、心だけが先に進むさまを示す。
 結句「山を越ゆらむ」は、山を越えたのだろうかという推量で、心が山を越えるという誇張の表現で結ぶ。

おもひやる:遠く離れたものに思いをはせる
まちかぬ:待ちきれない
作者
大江嘉言
出典
詞花和歌集
前の歌
秋の夜のつゆも曇らぬ月を見て 置きどころなきわが心かな
次の歌
秋山の清水は汲まじ濁りなば 宿れる月の曇りもぞする