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秋の夜の月に心のあくがれて
雲居にものを思ふころかな

歌の意味
秋の夜の月に心が引き寄せられて、雲のかなたの空でもの思いにふけるこのごろであることよ。
鑑賞
巻第三 秋歌 106

詞書「寛和二年内裏の歌合によませ給ひける」
 花山院が在位中の寛和二年(986)の内裏歌合で詠んだ歌である。
 月に心がさまよい出て、心だけが空の上でもの思いをしているという。「雲居」は宮中の意もあり、宮中にあって思い悩む帝の心とも読める。本巻の第八十九首と同じ歌合で詠まれている。月の歌群の結びとなる一首である。

 初句「秋の夜の」は、本巻の第百三首、第百四首と同じ初句で、秋の夜の月の歌を締めくくる。
 二句「月に心の」は、本巻の第百一首の二句と同じく、月に向かう心を示す。
 三句「あくがれて」は、心が身から離れてさまよい出てという意である。
 四句「雲居にものを」は、雲のある遥かな空にという意で、宮中を指す含みもある。
 結句「思ふころかな」は、もの思いをするこのごろだという詠嘆の「かな」で結ぶ。

あくがる:心が身から離れてさまよい出る
くもゐ:雲のある遥かな空、また宮中
作者
花山院
出典
詞花和歌集
前の歌
秋山の清水は汲まじ濁りなば 宿れる月の曇りもぞする
次の歌
ひとりゐて眺むる宿の荻の葉に 風こそ渡れ秋の夕暮