古典和歌stream

夕霧に梢も見えず初瀬山
入相の鐘の音ばかりして

歌の意味
夕霧に包まれて梢も見えない初瀬山から、日暮れを告げる鐘の音だけが聞こえてくる。
鑑賞
巻第三 秋歌 112

詞書「霧をよめる」
 源兼昌が霧を題として詠んだ歌である。
 夕霧に包まれて木々の梢さえ見えない初瀬山から、長谷寺の入相の鐘の音だけが響いてくる。視覚を閉ざされた中で聴覚だけが働くという構図で、霧の深さと夕暮れの静けさを印象的に表している。

 初句「夕霧に」は、夕方に立つ霧によってという意である。
 二句「梢も見えず」は、木の枝先さえ見えないという意で、霧の深さを示す。
 三句「初瀬山」は大和国の歌枕で、長谷寺がある。
 四句「入相の鐘の」は、日暮れに寺でつく鐘のことである。
 結句「音ばかりして」は、音だけがしてという意で、見えないものと聞こえるものの対比を余韻とともに結ぶ。

いりあひ:日の入るころ、夕暮れ
はつせやま:大和国の初瀬(現在の奈良県桜井市)の山、長谷寺がある
作者
源兼昌
出典
詞花和歌集
前の歌
荻の葉に露吹き結ぶ木枯らしの 音ぞ夜寒になりまさるなる
次の歌
秋の野の花見るほどの心をば 行くとやいはむ止まるとやいはむ