古典和歌stream

秋の野の花見るほどの心をば
行くとやいはむ止まるとやいはむ

歌の意味
秋の野の花を見ている間の私の心は、先へ行くと言えばよいのか、ここにとどまると言えばよいのか。
鑑賞
巻第三 秋歌 113

詞書「法輪へ詣でけるに、嵯峨野の花おもしろく咲きて侍りければ見てよめる」
 赤染衛門が法輪寺へ参詣する途中、嵯峨野の秋の花が美しく咲いていたのを見て詠んだ歌である。
 参詣のために先を急ぐ身でありながら、花に心を引き留められて足が進まない、その揺れる心を、行くとも止まるとも言えないと表している。対句的な下の句が軽やかで、秋の花を詠む歌群の始まりにふさわしい。

 初句「秋の野の」は、秋の野原のという意で、嵯峨野を指す。秋の花を詠む一連の一首目である。
 二句「花見るほどの」は、花を見ている間のという意である。
 三句「心をば」は、私の心をという意で、「をば」は対象を強く示す。
 四句「行くとやいはむ」は、先へ行くと言おうかという意で、「や」は疑問を表す。
 結句「止まるとやいはむ」は、とどまると言おうかという意で、四句と対句をなし、迷う心を示す。

ほふりん:京都嵯峨の法輪寺
作者
赤染衛門
出典
詞花和歌集
前の歌
夕霧に梢も見えず初瀬山 入相の鐘の音ばかりして
次の歌
神垣にかかるとならば朝顔も ゆふかくるまで匂はざらめや