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今年また咲くべき花のあらばこそ
うつろふ菊にめかれをもせめ

歌の意味
今年のうちにまた咲くはずの花があるのならば、色あせてゆく菊から目を離しもしようが、もうそんな花はないのだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 128

詞書「題しらず」
 道命法師の歌である。菊は一年の最後に咲く花であり、このあとに咲く花はない。だからこそ、色あせてゆく菊から目を離すことができないという。
 「〜ばこそ〜め」という構文で、他に花があるならば目を離しもしようが、実際にはないと逆の現実を強調している。前歌の、うつろう白菊を嘆く心を受け、名残の花を見つめ続ける思いを詠んでいる。

 初句「今年また」は、今年のうちにまたという意である。
 二句「咲くべき花の」は、咲くはずの花がという意で、菊のあとに咲く花を指す。
 三句「あらばこそ」は、あるならばこそという意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「め」と呼応する。
 四句「うつろふ菊に」は、色あせてゆく菊にという意で、前歌の第百二十七首の「うつろふ色」を受ける。
 結句「めかれをもせめ」は、目を離しもしようがという意で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形である。言外に、実際には目を離せないという意を含む。

めかる:目を離す、見なくなる
作者
道命
出典
詞花和歌集
前の歌
霜枯るるはじめと見ずは白菊の うつろふ色を嘆かざらまし
次の歌
草枯れの冬まで見よと露霜の 置きて残せる白菊の花