春雨のあや織りかけし水の面に
秋は紅葉の錦をぞ敷く
- 歌の意味
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春には春雨が綾を織りかけたように波紋を描いていた水面に、秋は紅葉の錦を敷きつめている。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 134
詞書「春より法輪寺に籠りて侍りける秋、大井河に紅葉のひまなく流れけるを見てよめる」
道命法師が、春から法輪寺に籠っていた年の秋、大井川に紅葉が隙間なく流れるのを見て詠んだ歌である。
春に籠り始めた時に見た、雨の波紋が綾のように広がる水面と、秋の今、紅葉が錦のように覆う水面とを対比している。春と秋の二つの季節を、同じ水面に織り出される布の美しさで描き分けた、時の流れを感じさせる歌である。
初句「春雨の」は、春に降る雨のという意で、詞書の籠り始めの春を示す。
二句「あや織りかけし」の「あや」は、織物の綾と、水面の波紋の模様の意を重ねた表現で、四句の錦と縁語になる。
三句「水の面に」は、大井川の水面にという意である。
四句「秋は紅葉の」は、秋には紅葉がという意で、初句の春と対比される。
結句「錦をぞ敷く」は、錦を敷きつめるという意で、係助詞「ぞ」を連体形「敷く」で結ぶ係り結びである。春の綾と秋の錦という対で一首を結ぶ。
あや:斜めの模様を織り出した織物の綾と、水面の波紋の模様を掛ける
にしき:さまざまな色糸で模様を織り出した織物
- 作者
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道命
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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山里は行き来の道の見えぬまで 秋の木の葉に埋もれにけり
- 次の歌
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名残なく時雨の空は晴れぬれど まだ降るものは木の葉なりけり