古典和歌stream

秋深み紅葉落ち敷く網代木は
氷魚のよるさへ赤く見えけり

歌の意味
秋が深まり、紅葉が散り敷いた網代木は、氷魚が寄ってくる夜でさえ赤く見えることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 137

詞書「一条摂政の障子に、網代に紅葉のひまなく寄りたるかた描きたる所によめる」
 原文の作者表記は番号外作者であるが、『詞花和歌集』では作者を藤原惟成とする。一条摂政すなわち藤原伊尹の邸の障子絵に、網代に紅葉が隙間なく寄っている様子が描かれた所に添えた歌である。
 網代は川に竹や木を組んで氷魚をとる仕掛けで、そこに紅葉が寄り集まって、暗い夜でさえ赤く見えるという。白い氷魚と赤い紅葉、夜の闇と紅葉の色の対比が鮮やかな、障子絵にふさわしい歌である。

 初句「秋深み」は、秋が深いのでという意で、本巻の第百二十六首と同じ初句である。
 二句「紅葉落ち敷く」は、紅葉が散って一面に敷きつめるという意である。
 三句「網代木は」は、網代を支える杭のことで、冬の宇治川などの景物である。
 四句「氷魚のよるさへ」の「よる」は、氷魚が寄る意と夜の意の掛詞で、夜の闇でさえという含みをもつ。
 結句「赤く見えけり」は、赤く見えることだという詠嘆で結び、紅葉の赤さを強調する。

あじろぎ:網代を支えるために川に打ち込んだ杭
ひを:鮎の稚魚、半透明で冬に網代でとる
よる:氷魚が網代に寄る意と、夜の意を掛ける
出典
詞花和歌集
前の歌
荒れ果てて月もとまらぬわが宿に 秋の木の葉を風ぞ吹きける
次の歌
初霜も置きにけらしな今朝見れば 野辺の浅茅も色づきにけり