都にておぼつかなさをならはずは
旅寝をいかに思ひやらまし
- 歌の意味
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都にいて、あなたの身を案じる心もとなさに慣れていなかったなら、旅先でのあなたの旅寝を、どのように思いやることができようか。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 172
都に残る者が、旅立つ人を思って詠んだ歌である。都で相手の身を案じ、心もとない思いをすることにすでに慣れているからこそ、旅先の不自由な旅寝のつらさも思いやることができるというのである。反実仮想の形をとり、見送る側の気がかりな心を裏側から言い表している。
別歌の巻頭に置かれ、旅立つ人ではなく、都に残る者の心から巻が始まっている。
初句「都にて」は、作者が都に残る立場であることを示す。次歌の第百七十三首の「陸奥の」をはじめ、本巻には遠国へ下る人を見送る歌が続き、巻頭のこの「都」がその起点となっている。
二句「おぼつかなさを」の「おぼつかなさ」は、相手の様子がわからず気がかりな状態をいう。本巻の巻末に置かれた第百八十六首の「はかなくも」と並べると、別歌の巻は心もとなさで始まり、はかなさで閉じられている。
三句「ならはずは」は、「ならふ」に打消の「ず」と係助詞「は」が付き、「もし慣れていなかったなら」という仮定を表す。
四句「旅寝をいかに」の「旅寝」は旅先で寝ること。「いかに」は結句の「思ひやらまし」にかかる。
結句「思ひやらまし」の「まし」は、三句の「ずは」と呼応する反実仮想の助動詞で、「どうして思いやることができようか」の意となる。
おもひやる:遠く離れた人の身の上を想像して案じる
たびね:旅先で宿をとって寝ること
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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住吉の現人神の久しさに 松もいくたび生ひかはるらむ
- 次の歌
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もろともにたたましものを陸奥の 衣の関をよそに聞くかな