もろともにたたましものを陸奥の
衣の関をよそに聞くかな
- 歌の意味
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あなたと一緒に旅立つはずであったのに。陸奥の衣の関のことを、今の私は遠く関わりのないものとして聞くばかりである。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 173
詞書「道貞忘れて後、陸奥国の守にて下りけるにつかはしける」
自分のもとを離れた夫が陸奥守として任国へ下ると聞き、詠み送った歌である。本来なら共に旅立ったはずの道を、今は他人事として聞くしかない身の寂しさを、陸奥の歌枕「衣の関」に託している。
詞書の「道貞」は、和泉式部の夫であった橘道貞である。二人の仲が絶えた後、道貞が陸奥守となって下向する際に贈った歌で、恨みを表に出さず、未練と寂しさを抑えた調子で伝えている点に味わいがある。
初句「もろともに」は「一緒に」の意で、夫婦として連れ立つはずであった間柄を思わせる。
二句「たたましものを」の「たた」は、旅に「立つ」意と衣を「裁つ」意を掛ける掛詞で、四句の「衣」と縁語になる。「まし」は反実仮想、「ものを」は逆接の詠嘆で、「旅立てたらよかったのに」という嘆きを表す。
三句「陸奥の」は道貞の任国を示す。本巻では第百七十五首の詞書にも陸奥守の下向が見え、陸奥へ下る人との別れが重ねて配列されている。
四句「衣の関を」の「衣の関」は陸奥国の歌枕である。「衣」は二句の「裁つ」と縁語をなし、関という境が二人の隔たりを象徴している。
結句「よそに聞くかな」の「よそに」は自分とは関わりのないものとしての意。「かな」は詠嘆の終助詞で、遠く離れて噂に聞くだけの身を嘆いて結ぶ。
たつ:旅に出立する意と、衣を裁つ意を掛ける
ころものせき:陸奥国の歌枕。衣川のほとりにあったとされる関
- 作者
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和泉式部
- 出典
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詞花和歌集
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都にておぼつかなさをならはずは 旅寝をいかに思ひやらまし
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喜びを加へに急ぐ旅なれば 思へどえこそとどめざりけれ